台湾各大学2015日本研究連合論壇
台湾各大学2015日本研究連合論壇 活動花絮
日期:2015.03.21 | 單位:臺灣大學文學院日本研究中心
        

        

        

        

     
台湾各大学2015日本研究連合論壇 議程表
日期:2015.03.21 | 單位:臺灣大學文學院日本研究中心
台湾各大学2015日本研究連合論壇
【開会の挨拶】

・李嘉進(亜東関係協会会長):
 近年、日台両国がお互いを重要なパートナーと位置づけ、それゆえか台湾各大学で日本研究センターが次々と設けられている。効率的に各大学の人材や資源を整合することができれば、日台の互いの理解を深めることにつながると期待している。

・高振群(外交部政務次長):
 台湾は「活路外交」政策をとっており、ソフトパワーで文化交流を促進する必要がある。政府・民間が学術界と協力しあうことで、外交利益を最大化させることができる。今回のフォーラムは日台の相互理解を促進するとともに、その研究成果は、両国の友好関係や今後の発展のための有益な意見となるだろう。

・沼田幹夫(日本交流協会台北事務所代表):
 交流協会では、近年、台湾における日本研究の促進と人材育成を重要分野として位置づけ、様々な支援事業を展開してきた。台湾における日本研究のゆるやかなプラットフォームの場として、また次世代を担う若手日本研究者の育成のためにも、今回のフォーラムが大きな一歩となる、と確信している。


 
【基調講演】

講演者:江丙坤(総統府資政)
テーマ:日台の経済協力関係
概 要:

 日本は台湾にとって最も重要な経済貿易のパートナーでる。いま双方とも経済成長が緩やかになり、産業構造の調整やモデルチェンジの正念場を迎えている。ゆえに、産業、貿易における協力関係を強化し、一刻も早くこの苦境を抜け出すことが、両国に課された急務である。日本の対台湾投資件数およびその金額は、この5年で急に増し、投資先としてはサービス業が主流となった。製造業への投資も、「研究開発」、「重要部品の製造」へと次第に変化している。台湾の対日投資も、2014年までを見ると、金額、件数共に著しく増加している。
 台湾は日本にとって、①地理的要因と物流の便利性、②文化的要因、③互いの信頼度の高さ、④広大な産業ネットワーク、⑤輸出関税の低さ、⑥インフラ完備、⑦優秀な人材、⑧知的財産権の保護、⑨法人税の低さ、といったメリットが多い。政府と民間は日台企業の産業提携を積極的に推進しており、例えば政府機関では交流協会と亜東関係協会、民間では日台商務交流協進会と日本経済団体連合会の交流等、提携のチャンスが開かれている。過去を振り返ってみると、技術投資(台湾の順徳工業と日本フィルコンが、相互投資で台湾輝徳科技公司を設立)や、合資(信越化学、台湾紫越電通、台湾信越矽利光の3社共同出資で信越化学浙江嘉善および信越化学江蘇南通を設立)といった提携形態がある。いずれも日台産業提携がますます緊密になっていることを示しており、今後は日台間でのFTA締結や「二重課税防止」に関する取り決めの早期実現に尽力し、日台双方の経済競争力の向上を目指したい。


講演者:辻中豊(日本政治学会理事長)
テーマ:市民社会の国際比較からみる台湾・日本・中国の将来
概 要:

 1997年より、各国の市民社会について調査している。21世紀になってからは、北京大学の協力を得て、中国(北京、浙江、黒龍江)からロシア、インド、トルコ等の15の国へと範囲をひろげ、アンケート方式で約63000の団体の資料を収集した。台湾と日本は、経済発展と政治の自由民主化を備えた、アジアでは数少ない国である。両国とも少子化や脱工業化社会といった問題を抱えているが、それゆえに互いに参考にできる社会構造を有している。中国の状況はもっと複雑で、21世紀に入ってから15年の間にGDP実質成長率は4倍になり、外交では影響力拡大に力を注ぎ、また社会組織(社会団体、NGO、基金)設立においても爆発的な増大がある。これらのことから、中国は社会組織の力で目下の社会問題を解決しようとしていると推測される。
 台湾、中国、日本の体制は根本的に異なるといえども、国民が直面している問題には共通性がある。現在、中国はかつて日本や台湾が対応してきた環境や福祉といった社会問題を抱えているが、民間団体には、国際情勢のような一触即発の状態にはない。この三国間には、実は協力関係があり、共に社会問題を解決していく可能性があるのである。


講演者:隈研吾(東京大学工学研究科教授)
テーマ:場所の力
概 要:

 昔から、文明の発展は災害に大きく影響されてきた。日本の311地震は、どんな丈夫な建築であっても大自然の大きな力の前ではまったく無力であり、むしろ大切なのは自然を尊敬し、自然の前で謙虚になることだと教えてくれた。ゆえに強くて頑丈なコンクリート建築ではなく、自然環境との調和やその土地の素材の活用を重視するようになった。このような建築方式は、地元民に建築との一体感を生みやすく、建築材料の上でも竹や木造建築等に立ち返り、その土地の素材を用いることで、コストを下げることが可能となる。つまり、伝統的な建築技術の再興ということである。例えば釘を使わない木造技術は、木を組んでできた空間を利用して芸術作品を展示でき、また茅葺は断熱性に優れているため、建物の外壁に用いるのに適しているなど、建築とその土地とを結びつけると同時に、現代社会で求められている機能的な建築物を実現することができる。
 グローバル化の中にあっても、我々は一人ひとりがそれぞれの土地を大切にし、その土地の特色を生かしてコミュニティを築き、人と場所との間に、新しいつながりを構築することが求められる。

 
【論文発表】

1.文化領域
發表人:徐興慶(台湾大学日本研究センター主任)
テーマ:日台「異文化」の相互理解と日本研究の再発展
概 要:

 台湾の日本研究が直面している問題として、日本語教育と日本研究人材の育成を繋ぐしくみがないこと、そして国内の日本研究者の研究領域が重複しやすいことが挙げられる。この根底には研究者等を整合するシステムの欠如があり、それに加えて「地域研究」の定義が困難なため、国家機関の補助を得られにくいことも原因として考えられる。これらの問題を解決するには、まず日本語学科の学生が語学力の他に社会科学分野の専門知識を身につけ、逆に他学科の学生は十分な日本語力を習得する必要がある。ゆえに今、人文と社会科学の対話システムの構築や、「日本研究学程」等のカリキュラムの実施に着手しなければならず、それによって初めて多分野における日本研究が強化され、日台産官学界の発展が促されるのである。
 日本の植民統治から日本への憎しみを抱いていた中韓でも、近年は次第に日本研究が増え、その水準も向上してきている。各国における「日本研究」の勃興に際し、台湾政府は次の6項目について迅速に対応すべきである。
  1.「日本研究向上計画」企画委員会を組織し、国家発展の需要に合わせ、短・中・長期の日本研究計画を策定する。
  2.国内「日本研究」人材バンクの構築や責任を負う専門機関の設置、台湾各大学の日本研究センターの統合、さらに一歩進んで台湾日本研究センターの設置を発展目標とする。
  3.各分野の統合型「日本学研究」計画を推進し、研究の勢いを促進する。
  4.優秀な人材の育成のため、「日本研究」の研究計画及び大学院学生(博士課程)の制度への参加を奨励する。
  5.常設予算を編成し、また「国際交流基金」や日台企業界へも協力や援助を求め、国内の日本研究水準を向上させていく。
  6.日台文化交流の発展のために、日本の文化協定国への加入実現に向けて積極的に努力する。
 これにより、学校の枠を超えた人材の整合が進むと同時に、歴史の重荷からの脱却を図ることもでき、台湾日本研究の学術性と実用性もあらわれるようになる。


2.国際関係
發表人:張啓雄(中央研究院近代史研究所研究員)
テーマ:第2次安倍内閣の「聯美制中(米国と結んで中国を制す)」外交政策―G3 vs. G2の外交戦略―
概 要:

 第2次安倍内閣の対外政策は、基本的には戦後の、アメリカを中心とする資本主義陣営が日本に設定した対外政策の枠組みから抜け出せていない。安倍内閣は民族主義の価値観や国内の政治情勢、そして対外的な国家利益の変化といった要素やライバル意識から中国を敵視し、連米制中政策を取ってしまった。そこで、新たに「日米同盟」を軸とした、「対米協調」を採用した。
 安倍内閣の2012年以降の対外政策を要約すると、次の6つのポイントに分けられる。
  1.「日米同盟」の強化
  2.日韓関係の修復
  3.国防体制を調整し、対中軍事と安保体制を強化
  4.日本とASEANの政治・外交・貿易関係の強化
  5.RCEPとTPPに同時に参加し、中国の東アジア経済統合の再編に対抗
  6.地球儀を俯瞰し、中国封じ込め外交戦略を展開
 これらからわかるように、日本は中国の台頭によって、次第に強硬な右寄りの路線に向かうようになった。日中の国際関係が「東アジア共同体」の形成にどのような変化をもたらすのかについては、まだ見守る必要がある。しかし、日本が歴史の教訓を忘れず、弧形に連なる島嶼部プレートを基地として堅守し、東アジアと連合して共に全世界へと経済貿易関係の政策を拡大することこそ、今後の日本の発展の道だと考える。


3.経済領域
發表人:蘇顯揚(中華経済研究院日本センター主任)
テーマ:アベノミクスの課題と展望
概 要:

 日本経済は1991年のバブル崩壊後、20年の長きにわたり景気の低迷が続き、この間の平均実質GDP成長率はわずか0.9%で、「ゼロ成長時代」または「失われた20年」と呼ばれた。これは主に新陳代謝機能の停滞によりもたらされた需要不足によるものだった。2012年末に登場した安倍政権は、アベノミクスの三本の矢の政策によって経済を好転させ、内需の持続成長を実現し、経済・財政の再建を図ろうとした。安倍政権のスピードと実行力が、「官邸主導」による「レジームチェンジ」の実行という難事業に大いに発揮されたが、その一方で、アベノミクスは「虚構」の政策だと批判もされている。しかし、台湾も経済のシフトチェンジという問題に直面しており、台湾の経済が効率性主導から技術革新主導へと転換するために、アベノミクスの次の3点がヒントとなるだろう。
  1.「勇敢にチャレンジする」という姿勢:日本は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加するため、農業協同組合中央会(JA全中)の指導権限を撤廃し、地方の農家が自由に生産効率の向上を図れるようにした。この件について安倍首相は責任を取る意向があり、改革推進に向けた大きな一歩を踏み出すこととなった。
  2.KPI指数による数値化:これは政策内容の修正の根拠とすることができ、また、それまでの計画(Plan)のみの手法から、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)のPDCAへの発展も可能となった。
  3.全要素生産力(TFP)を向上させ、新産業を創出する。

 
【論壇一】台湾の日本研究人材の連携にはどうすればいいのか

主持人:于乃明(政治大學教務長)
(1)政治・国際関係領域
代表発言者:張啓雄(中央研究院近代史研究所研究員)
パネリスト:林泉忠(中央研究院近代史研究所副研究員)
      陳永峰(東海大学跨領域日本区域研究センター主任)
      楊鈞池(高雄大学政治法律学系教授)

  ‧日中新競争時代における、台湾日本研究の強み、問題、方向
  ‧今後の台湾日本研究の重点―人材の集結、養成、募集


(2)経済領域
代表発言者:任耀庭(淡江大学亜洲研究所所長)
パネリスト:張四明(台北大学教授兼研究発展処研発長)
      張瑞雄(高雄第一科技大学教授)
      黎立仁(台中科技大学日本研究センター主任)
      蘇顯揚(中華経済研究院日本センター主任)

  ‧日台経済交流の問題点―人材の整合と断層
  ‧具体的な提案―産官学界と異なる領域の対話を強化する


(3)歷史文化領域
代表発言者:劉長輝(淡江大学日文系副教授)
パネリスト:甘懐真(台湾大学歴史系教授)

  ‧日本史・日本文化研究の問題点―資源の不足と広さの不十分さ
  ‧具体的な提案―異なる領域との対話と人材の整合

 
【論壇二】若手日本研究者の育成―日本語教育から日本研究へ

主持人:賴振南(輔仁大學外語學院院長)
(1)語學領域
 代表発言者:頼錦雀(東呉大学外語学院院長)
  パネリスト:林立萍(台湾大学日文系教授兼日本研究センター副主任)
        陳淑娟(東呉大学日文系教授)
        黄淑燕(東海大学日文系主任)
        葉淑華(高雄第一科技大学外語学院院長)
        蕭玉燕(南栄科技大学応日系主任)

  ‧日本語教育の現況および問題
  ‧具体的な提案

(2)文学領域
 代表発言者:陳明姿(台湾大学日文系教授)
  パネリスト:林淑丹(文藻外語大学日文系主任)
        范淑文(台湾大学日文系主任)
        張月環(屏東大学応日系主任)
        彭春陽(淡江大学校友服務暨資源発展処執行長)
        曾秋桂(淡江大学日文系教授)

   ‧日本研究人材育成の基礎―日本語能力と文化理解
   ‧問題と具体的な提案  

(3)文化・翻訳領域
 代表発言者:楊承淑(輔仁大学跨文化研究所所長)
  パネリスト:徐翔生(政治大学日文系主任)
        馬耀輝(淡江大学日文系主任)
        簡暁花(中華大学応日系主任)

   ‧新世代の日本学研究人材
   ‧具体的な提案