中江藤樹(1608-1648)は江戸時代初期の儒学者で、「日本陽明學の祖」と称されてる。例えば、高瀬武次郎『日本之陽明學』の「序論」では、「我國の王學は中江藤樹を以て祖と為す」と述べられ、全31章中、最初の章が中江藤樹である。井上哲次郎は『日本陽明學派之哲学』において、「中江藤樹と藤樹学派」を第一篇として中江藤樹の学問体系化を図り、藤樹を藤樹学派の祖と位置付けている。
本講演では、中江藤樹の思想を「心学」という観点から紹介したい。ここでいう「心学」とは、日本陽明学、日本朱子学、禅宗、そして石門心学を含む、広義の「日本心学」を指す(吉田公平《日本近世の心學思想》)。まず、江戸時代初期の学問状況と儒教(朱子学と陽明学)の日本への伝来を概観する。次に、中江藤樹の生涯と思想を紹介し、日本陽明学の源流が「心学」の影響下でどのように形成されたのかを探る。