第三回台湾大学崇徳留学講座が、翻訳家の頼明珠氏を講師として迎え、2023年4月7日(金)に台湾大学校史館2階中央ホールで開催された。頼氏は長年数々の文学作品(主に村上春樹の作品)を中国語に翻訳し、翻訳活動を通じて、日本と台湾の文化交流や相互理解を促進している。2022年秋の外国人叙勲で旭日双光章を受賞した。
本講座は、本学の陳文章学長の挨拶により幕を開けた。陳学長は過去に日本の学者と共同研究をした経験から、異なる文化を体験して視野を広げることがいかに重要であるかと奨学生に強調した。そして、台湾大学崇徳留日奨学金の設立に多大なるご尽力とご協力を賜った崇徳 工業発展基金会黄教漳董事長に感謝の意を表し、知日人材の育成が台湾における日本研究の発展に重要であると述べた。続いて黄教漳董事長が挨拶し、自身の留学経験を語り、この機会を通じて母校と社会へ恩返しができることを大変嬉しく思うと述べた。その後、陳学長は台湾大 学の代表として記念瑠璃トロフィーを黄董事長に贈った。また、黄董事長とともに第二回「台湾大学崇徳留日奨学金」の受賞者に賞状と賞金を授与した。受賞者は本学土木工程学科と化学工程学科の卒業生2名である。それぞれ京都大学と東京大学の博士課程へ進学する予定であ る。最後に、日本台湾交流協会新聞文化部村嶋郁代部長が立会人として挨拶し、奨学生に将来専門分野で十分な成果をあげることを期待し、台湾における日本研究がさらに発展し、今後の日台交流もよりいっそう深まることを願っていると述べた。
今回講師を務めた頼明珠氏は中興大学農業経済学科を卒業し、千葉大学大学院園芸学研究科に留学した。広報企画の執筆を務めた経験があり、趣味は文学、芸術と旅行である。今回の講座で、頼氏は日本語を勉強した経験を紹介し、外国語を学ぶにはこまめに復習すること が肝要だと強調し、挫折を恐れないようにと学生たちにアドバイスした。また、留学時の様々な出会いを大切にしてほしいと訴えた。友人との交流は、単に外国語に馴染むきっかけとなるだけでなく、今後の人生においても貴重な思い出にもなる。
また、翻訳業を始めた最初の契機は、日本文学に対する情熱だったそうである。偶然村上春樹氏の作品に出会い、これを翻訳すれば中国語しか理解できない読者にもこの作品のすばらしさを紹介できるのではないかという気持ちで始めたのが、まさか今日まで翻訳家を続けることになったとは予想すらできなかったという。頼氏は学生たちに自分の趣味を探し求めることを勧めた。自分の専門は園芸であるが、文学に対する熱意を忘れることはなかったように、本業以外に様々な体験をして人生を豊かにしてほしい。人生の選択は必ずしも一つだけではない。ひたむきに努力を続けていれば、見たことのない景色が私たちを待っているかもしれない。頼氏はこう話し、講演を締めくくった。