日式建築とは何か? 総統府のような官庁から木造の長屋、バロック騎楼もある。「官と民」「和風と洋風」という区分だけでなく、「和洋折衷」「表現主義」「アールデコ」など多様な風貌すべてを「日式」と呼ぶのには抵抗がある。
だが、それは日本も同じこと。明治維新前後に一気に流入したヨーロッパの建築をすべて「洋風」と呼んだ。「古典主義」「ゴシック」「ルネッサンス」に加えて、熱帯の「コロニアル様式」まで、一緒くたにして受容した。一方、台湾で「日本を経由した様式すべてを日式と呼ぶ」のは、仕方のないこと。日式建築を見る時には、そうした多様性をまず理解してほしい。
台湾の日式建築は、日本の建築と異なる点も多い。「洋風ニコイチ長屋」「出窓の多用」「高基礎」「トラス架構」など、いずれも、歴史的・気候的・風土的理由から、台湾で独自に進化したスタイルだ。そんな差異をよく見ていくと、丈夫で美しい建物を作ろうとした先人たちの智慧と苦労を知ることができる。
日式建築を保存・再生する動きが盛んだ。基隆では、学校の宿舎を残すために奮闘している教師に会った。学者や生徒や市民が応援している。法制度も味方している。「文化財保護では後進国」と言われる日本の一人として、そこをいちばん学びたい。