ポピュリズムの興隆は以下の2つの主な理由にまとめることができる。まず一つ目は、経済的条件の劣化が中流階級の人々を脅かしていることである。世界の収入上位1パーセントの人々と残りの99パーセントの間の貧富の格差がかぎを握っている。二つ目は、社会文化的アイデンティティである。グローバル化によって、人々は自身の存在価値が道具として打ち捨てられ、顧みられないことにならないか意識し始めている。
経済グローバル化の発展は政治的困難をもたらす。D.ロドリックの「世界経済の政治的トリレンマ」理論によれば、高度グローバル化、国家主権、そして民主主義の3点をバランスよく保つことは不可能である。このうちいずれか2点が同時に成立すれば、残りの1点が犠牲となる。例えば、中国とシンガポールは強力な主権的意思の下でグローバル化を推進し、民主主義は結果的に抑えつけられた。あるいはWTOと国連が世界を管理し、それをNGOや総会などによっていくばくか民主的な方法で運営しようとすれば、国家主権が犠牲になりうる。今は、民主的な国民主権がグローバル化に牙を剥く。
ポピュリズムの興隆は各民主国内部の矛盾と機能不全を引き起こし、他方で権威主義体制国の権力が拡大している。最も分かりやすい例は、中国が「切り下げの帝国」、即ち普遍的価値を押し下げる浸透力を持つ大国として興隆していることである。中国は他国のインフラに投資し、他国のメディアを買収したりしながら、民主国に浸透を図る「シャープ・パワー」になった。
リベラル国際秩序の再建、中流階級の再生及び社会水準を維持するために、各国がいかに連携して対応するのかということは、先進民主国、ひいては日台関係にも影響を及ぼすと思われる。日台は、互いに協力を深め、いかにしてWin-Winの関係に持っていくことを考える必要があるだろう。近年両国の関係は少し滞っていることは否めないが、今後は様々な問題についての意見交換を拡大させ、ますます深刻化する世界危機を改善していくことを希望する。