商社マンとして会社生活の大半を中国との関りで過ごしてきた。特に日中貿易の黎明期の1980年代に中国での生活や仕事で曲折を経験、また90年代以降は中国が高度成長に離陸せんとする瞬間を目の当たりにしてきた。この20年間を通し中国と日本の社会や文化の違いをその現場で見てきたことは大きな驚きであると共に、中国の発展の可能性と限界を感じていた。
その後2008年以降台湾に生活の場を移してから、日本~中国~台湾を三角関係で捉えて見るようにしてきた。日台は歴史的な特別な繋がりがあり、今後膨張する中国と伍していく上でも日台の連携は相互のメリットと感じている。唯、日台交流は庶民レベルでは長期に亘り台湾側の片思いであった部分が大きく、相互理解では大きな温度差があった。
漸く、2011年の311大震災を契機に日台の親密度が濃くなってきており、最近は人的往来も急速に拡大し相互理解は大いに是正されてきているが、それでも日本側の台湾理解不足の面がまだまだ否めない。この温度差ギャップの主な原因は日本の学校教育やメデイアの報道姿勢によるもので主な課題は日本側にあるかと思っている。
又、今後急激に進む日本(いずれ台湾でも)の少子高齢化による人材不足補填と国の活力の維持のためには外国優秀人材の活用が不可欠と考えられる。その中で台湾と日本は相性もよく相互補完的意味合いもあり交流促進が重要と考える。更には日本にとって台湾含むアジアでは日本の「おもてなし」文化などの伝統的価値観が受け入れられる素地も大きく、そういった交流を通じて新たな友情と絆が築いていかれると考える。その為には相手国側での日本語による意志疎通が出来る人材育成が重要となってくる。特に台湾では日本語世代が少なくなっていく中で、若者には綺麗な本格的な日本語の伝承を呼びかけていきたい。日本の若者には英語と中国語を、アジアや台湾では日本語の普及促進を進めていく、これがこれからの方向ではないかと思っている。
今回の講演を通じ、学生の皆さんに私の中国経験も参考として頂きながら日台交流の現状と課題の話をするとともに、今後日台の橋渡しの担い手として一層の日本語の磨きをかけて活躍されんことを期待している。