主に二つの論点に関して話します。
第一の論点は、武者小路はなぜ超越(超絶)主義者になったのか、どのように出自の重荷から精神的に抜け出せたのかという問題と関連しています。武者小路を始め、白樺派がどのように批判され、理解されてきたのかについて述べ、そのような批判や理解がなぜ不当なのかについて論じます。
第二の論点は、第一の論点と関連して、一連の三つの問題、1.「新ロマン主義とは何か」2.「日本にも新ロマン主義があったのか」、3.「あったならば、その中心人物は誰なのか」です。まず、1と2について併せて論じ、つぎに、2と3について論じます。
前者については、歴史的な資料を用いて、新ロマン主義の概要を探り、それを武者小路の思想の特質と見比べて、新ロマン主義の定義を提示します。
後者については、吉田精一の著作における新ロマン主義の解釈と日本近代文学史における取り扱い方、白樺派についての理解と取り扱い方を提示して、その首肯すべき点、理解と議論が欠落している点、首肯できない点について論じ、新ロマン主義の内容についての議論を深めます。その過程で夏目漱石や耽美・享楽主義の文学についても新ロマン主義の視点から論じます。
全体を通じて、武者小路と白樺派の近代文学史上における位置をどのように定めるべきかについて考えます。
附件:米山禎一先生演講全文