1. 文化領域
發表人:徐興慶(台湾大学日本研究センター主任)
テーマ:日台「異文化」の相互理解と日本研究の再発展
台湾の日本研究が直面している問題として、日本語教育と日本研究人材の育成を繋ぐしくみがないこと、そして国内の日本研究者の研究領域が重複しやすいことが挙げられる。この根底には研究者等を整合するシステムの欠如があり、それに加えて「地域研究」の定義が困難なため、国家機関の補助を得られにくいことも原因として考えられる。これらの問題を解決するには、まず日本語学科の学生が語学力の他に社会科学分野の専門知識を身につけ、逆に他学科の学生は十分な日本語力を習得する必要がある。ゆえに今、人文と社会科学の対話システムの構築や、「日本研究学程」等のカリキュラムの実施に着手しなければならず、それによって初めて多分野における日本研究が強化され、日台産官学界の発展が促されるのである。
日本の植民統治から日本への憎しみを抱いていた中韓でも、近年は次第に日本研究が増え、その水準も向上してきている。各国における「日本研究」の勃興に際し、台湾政府は次の6項目について迅速に対応すべきである。
- 「日本研究向上計画」企画委員会を組織し、国家発展の需要に合わせ、短・中・長期の日本研究計画を策定する。
- 国内「日本研究」人材バンクの構築や責任を負う専門機関の設置、台湾各大学の日本研究センターの統合、さらに一歩進んで台湾日本研究センターの設置を発展目標とする。
- 各分野の統合型「日本学研究」計画を推進し、研究の勢いを促進する。
- 優秀な人材の育成のため、「日本研究」の研究計画及び大学院学生(博士課程)の制度への参加を奨励する。
- 常設予算を編成し、また「国際交流基金」や日台企業界へも協力や援助を求め、国内の日本研究水準を向上させていく。
- 日台文化交流の発展のために、日本の文化協定国への加入実現に向けて積極的に努力する。
これにより、学校の枠を超えた人材の整合が進むと同時に、歴史の重荷からの脱却を図ることもでき、台湾日本研究の学術性と実用性もあらわれるようになる。
2. 國際關係
發表人:張啓雄(中央研究院近代史研究所研究員)
テーマ:第2次安倍内閣の「聯美制中(米国と結んで中国を制す)」外交政策―G3 vs. G2の外交戦略―
第2次安倍内閣の対外政策は、基本的には戦後の、アメリカを中心とする資本主義陣営が日本に設定した対外政策の枠組みから抜け出せていない。安倍内閣は民族主義の価値観や国内の政治情勢、そして対外的な国家利益の変化といった要素やライバル意識から中国を敵視し、連米制中政策を取ってしまった。そこで、新たに「日米同盟」を軸とした、「対米協調」を採用した。
安倍内閣の2012年以降の対外政策を要約すると、次の6つのポイントに分けられる。
- 「日米同盟」の強化
- 日韓関係の修復
- 国防体制を調整し、対中軍事と安保体制を強化
- 日本とASEANの政治・外交・貿易関係の強化
- RCEPとTPPに同時に参加し、中国の東アジア経済統合の再編に対抗
- 地球儀を俯瞰し、中国封じ込め外交戦略を展開
これらからわかるように、日本は中国の台頭によって、次第に強硬な右寄りの路線に向かうようになった。日中の国際関係が「東アジア共同体」の形成にどのような変化をもたらすのかについては、まだ見守る必要がある。しかし、日本が歴史の教訓を忘れず、弧形に連なる島嶼部プレートを基地として堅守し、東アジアと連合して共に全世界へと経済貿易関係の政策を拡大することこそ、今後の日本の発展の道だと考える。
3. 經濟領域
發表人:蘇顯揚(中華経済研究院日本センター主任)
テーマ:アベノミクスの課題と展望
日本経済は1991年のバブル崩壊後、20年の長きにわたり景気の低迷が続き、この間の平均実質GDP成長率はわずか0.9%で、「ゼロ成長時代」または「失われた20年」と呼ばれた。これは主に新陳代謝機能の停滞によりもたらされた需要不足によるものだった。2012年末に登場した安倍政権は、アベノミクスの三本の矢の政策によって経済を好転させ、内需の持続成長を実現し、経済・財政の再建を図ろうとした。安倍政権のスピードと実行力が、「官邸主導」による「レジームチェンジ」の実行という難事業に大いに発揮されたが、その一方で、アベノミクスは「虚構」の政策だと批判もされている。しかし、台湾も経済のシフトチェンジという問題に直面しており、台湾の経済が効率性主導から技術革新主導へと転換するために、アベノミクスの次の3点がヒントとなるだろう。
- 「勇敢にチャレンジする」という姿勢:日本は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加するため、農業協同組合中央会(JA全中)の指導権限を撤廃し、地方の農家が自由に生産効率の向上を図れるようにした。この件について安倍首相は責任を取る意向があり、改革推進に向けた大きな一歩を踏み出すこととなった。
- KPI指数による数値化:これは政策内容の修正の根拠とすることができ、また、それまでの計画(Plan)のみの手法から、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)のPDCAへの発展も可能となった。
- 全要素生産力(TFP)を向上させ、新産業を創出する。
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