E.アンデルセンの福祉国家論では、日本や台湾など東アジアの国々は、ヨーロッパやアメリカに対し一括りに東アジア・モデルと呼ばれている。韓国や台湾など東アジアの国々では、1997年に起こったアジア通貨危機によってもたらされた経済危機の影響により、その後の近代化が時間的にも非常に凝縮された形で起こったとして「圧縮された近代」と呼ばれている。極低出生率や生涯独身率の上昇など家族変化も大きく、この「圧縮的家族変化」が進行する中、家族はリスクとして回避されるようになってきた。しかしこのような家族変化にも関わらず、日本をはじめ、東アジア諸国の福祉施策ではケアが脱家族化されずに家族に担われている家族主義(familialism)に基づき、制度的にも近代家族を前提に組まれているという矛盾がある。この矛盾により、日本のひとり親の母子家庭では、男性中心の労働市場によって、子どものケアと仕事の両立は大変難しく、ひとり親家庭のこうむる貧困は、さらにワークフェア施策導入による手当削減も加わり、子どもへの貧困の連鎖の現象にも及んでいる。
東アジア諸国において進行する経済のグローバル化とそれに伴う家族変化について確認することにより、この変化に即した家族政策の在り方について討議を通じて一緒に検討していきたい。