タイトルにあるように、中国文学研究者として出発した自分がどのような経緯で台湾文学研究に取り組むようになったかを明らかにするとともに、同時にそうした過程で日本の台湾文学研究をどのように参照してきたかを紹介したい。これまで日本では台湾文学研究は台湾文学・日本文学・中国文学といった異なる文学研究領域や文学を台湾社会理解の手段とする地域研究など、様々な回路を通じて展開されてきたが、1990年代以降次第に独立した研究領域として認知が進んできた。その代表的な例として、1998年に設立された日本台湾学会を挙げることができるだろう。その後、この学会を中心として、様々な翻訳や研究書の出版が進み、日本における台湾文学研究はかなりしっかりした基礎を形成しつつあると言える。今回はそうした経緯や、その中で現れた研究成果をどのように評価するか、できるだけ具体例に即して話すことにする。