日本学研究叢書8
本書の論考は、台湾・中国・韓国・日本の研究者がそれぞれの独自の視点から、「近代東アジアのアポリア」としての課題を提示したものである。「『近代』とは何か」、あるいは「『東アジア』とは何か」、さらには「『東アジアにとっての近代』とは何か」、そして、それらは今なお、「何であり続けているのか」という問いかけにほかならないのである。そこで、山室信一氏は「東アジア人文・社会科学研究の課題と方法」という研究視角から解説し、東郷和彦・李鐘元・木村幹氏からは、一触即発の危険性ゆえに解決を迫られているアクチュアリティーをもった問題に関して、外交史と外国研究のあり方におけるアポリアを問い返すという視点から、果敢かつ精密な考察が重ねられている。それぞれが解決への道筋を示そうという意欲的な試論である。また「アポリアそのものの問い返し」という志向性をもった論考として、劉建輝、馬場公彦・劉岳兵・稲賀繁美・宋錫源・金錫根・徐興慶・緒形康氏らの、資料の博捜と該博な学識に裏付けられた重厚かつヴィヴィッドな論文が収められており、東アジアにおける未解決な問題そのものの根源を問い返すためのヒントが、賢明なる読者のために提供されている。 |
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