台湾大学‧名古屋大学第2回大学院生合同発表会
名古屋大学第2回大学院生合同発表会 活動花絮
日期:2015.4.17 | 單位:台湾大学‧名古屋大學
     

   

 

名古屋大学第2回大学院生合同発表会
日期:2015.4.17 | 單位:台湾大学‧名古屋大學
名古屋大学第2回大学院生合同発表会
 国立台湾大学日本研究センターは2014年に名古屋大学「アジアの中の日本文化」研究センター(JACRC)と学術交流協定を締結し、若手研究者および大学院生の日本研究水準の向上、「台湾的特色を持つ日本研究」の構築に力を注いできた。2014年の第1回「台湾大学・名古屋大学大学院生合同発表会」に続き、2015年は名古屋大学人類文化遺産テクスト学研究センター(CHT)も加わり、4月17日、名古屋大学情報文化学部会議室にて第2回の合同発表会を行った。次世代若手人材を育成し、また国際共同研究の共同目標を開拓、発展させることを目的としている。
論文発表一

発表者:鄧宜欣(台湾大学日本語文学研究所修士課程)
テーマ:元禄享保期の経世思想―荻生徂徠と太宰春台を中心に―

発表者:藍雯威(台湾大学日本語文学研究所修士課程)
テーマ:近世における岡山藩の教育-郷學校である閑谷學校を中心に-

発表者:山田裕輝(名古屋大学文学研究科博士後期課程)
テーマ:幕末期の英国軍艦下関来航問題と萩藩―安政六年と文久元年の事例から―

論文発表二

発表者:王偉玲(台湾大学日本語文学研究所修士課程)
テーマ:中江兆民の近代的人間観の形成―リベルテーモラルについて―

発表者:江俊億(台湾大学中国文学研究所博士課程)
テーマ:「意」を中心として吉村秋陽と大橋訥庵の〈格致賸議〉論争を見る

発表者:佘筠珺(台湾大学中国文学研究所博士課程)
テーマ:久保天随の各版の『秋碧吟廬詩稿』の性質と原稿の「論評」現象―『詩苑』に収録された詩・詞を参照

論文発表三

発表者:安井海洋(名古屋大学文学研究科博士後期課程)
テーマ:徳田秋聲『黴』の同時代評分析

発表者:張文聰(名古屋大学文学研究科博士後期課程)
テーマ:帝国下の妻たち―張文環の『閹雞』と太宰治の『水仙』をめぐって―

発表者:李明書(台湾大学哲学研究所博士課程)
テーマ:日本における「批判仏教」後の発展の方向:哲學的・生命倫理學的アプローチを考察の手掛りとして

論文発表四

発表者:李品儀(台湾大学人類学研究所¬修士課程)
テーマ:「日本に通し、台湾は魂を現代に任した」─日治時代台湾における日本カフェ文化の伝承と改造のその文化史の研究

発表者:松山由布子(名古屋大学文学研究科博士後期課程)
テーマ:愛知県奥三河地域の花太夫と病人祈祷―『御歳徳神祭文』を中心に―

発表者:秦勤(名古屋大学文学研究科博士後期課程)
テーマ:同志としての中国、クィアとしての日本−−日中クィア映画祭における交渉

まとめと今後の展望
 この10年で、「東アジア」の学術的視点は台湾の学界において非常に注目されるようになり、また、実際に「東アジア」各国の学者によって積極的に研究が行われている。今回の合同発表会で発表された12の論文から考えると、名古屋大学の院生による5篇の論文は、幕末のイギリス軍艦来航問題の再考、近代小説が反映する自然主義の気風と性別表現、地域民族文化分析と現代の性に関する議題に分かれており、その中には史学、比較文学、人類学、社会学および性同一性等の様々な要素が含まれている。台湾大学の7篇の論文に至っては、社会、教育、政治思想、儒学、仏学、文献学、文化史等、その領域は多岐にわたっている。これは、目下の台湾次世代研究者の「東アジア」の経世、教化、道徳啓蒙、思想、近代漢詩、文学批判、生命倫理、国民性、ひいてはジェンダー・フリーといった文化現象に対する多元的な視野と関心を体現しており、大変意義深いものである。

 さらに重要なのは、両校の院生が教授陣から貴重な批評を得ただけでなく、国を越えた公式の学術会議の場で研究成果を発表するという大変貴重な経験をしたことである。共に対話や交流・質問をし合う中で、良かったところや足りないところを見つけ、また自身の研究の学術的位置づけおよび意義についてさらに深く考えることができる。辻本雅史教授が懇親会でお話しされたように、これまで「東アジア」各国の学者は、このように一堂に会して研究成果を発表してきた。しかし今日の学術領域が細分化した現状においては、いかにして領域の垣根を越え協力していくか、ということが重要な課題となっている。今後、台湾大学日本研究センターのサポートの下で、台湾大学の若手研究者や大学院生が優れた成果を出し、「東アジア」関連の研究により一層の努力を重ねていくものと信じている。